監禁恋情
「和樹。」

主人の母を、その私室まで送り届けたあと、主人は俺を呼んだ。

「もう、俺に仕えなくてもいい。
和樹。お前の好きに生きろ。」

思いつめたように言う主人に、俺は微笑みかけた。

「尊敬する主人は、ちゃんと戻って来てくれました。
幹久様。
あなたに拾われた時から、俺はあなただけに仕えると誓いました。
例え今度あなたが道を間違えても、俺はあなたの側にいましょう。
手となり足となり、あなたを支えます。」

驚いた顔をする主人に、俺はさらに続ける。

「だからどうか、俺を側に置いて下さい。」

頭を下げ、願う。

「…わかった。」

頭を上げて、今度はこちらが驚いた。
主人も同じように、頭を下げていたから。

「ありがとう。」

何年かぶりのその言葉で、
俺は何もかも救われた気がした。
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