監禁恋情
どちらからの会話だったか、だけどそれは二人の思いで、嘘ではない本当の感情だった。

その日から、自分と愛の関係は変わった。

互いの名前を呼びあうだけで、救われた。
他の患者たちにも、自分たちの関係は気付かれていたようだったが、それをとやかく言う者はいなかった。
むしろ、応対が優しくなったとか、表情が和らいだなどと言われた。

それを自分は、ただ嬉しく思い、愛も、自分との関係によって救われているのだろうと、勝手に解釈していた。



「愛。なにを見ているの?」

「桜よ。」

「花なんか、咲いてないぞ?」

「桜は、桜よ?人は美しく花が咲いたときにだけこの子たちを持て囃(はや)すでしょう?花が咲いていない木だって、こんなに力強くて立派なのに。」

頬を膨らます愛に、微笑んだ。

「最近、少しずつ感情が戻ってきたね。」

「そう、そうかもしれない。」

いつもの、屈託のない笑顔を向けて、愛が言った。

「先生は、私が木だけになっちゃっても好きでいてくれる?」

自分の中に、よくわからない不安が一瞬生まれたが、すぐに消えた。
愛を抱きしめて、

「もちろん。最後まで。」

と、答えた。
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