監禁恋情
醒
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
「さくら。」
今日何度目になるかわからない。自ら呟いた。
『さくら』という名前を男に貰った。自分が持つ数少ない記憶の中に、それは確かに存在していた。
それは、ピンク色の可愛いらしい花が咲く木の名前。
人に高く売る為だけに、最低限のことだけを教えられて、お前は見た目が良いからと幼い頃から外見だけを整えられてきた。
それでも、そこしか知らなかった幼い自分にとって家であり、世界の全てであったあの施設で。
自分は、確かに満開に咲き誇ったその花を見たことがある。
次々に売られていく、仲間の少女たちの涙と、その花の美しさだけは、自分の頭に鮮明に焼き付いていた。
「さくらだって。」
また、呟く。
自然と微笑みが生まれる。
さくらだ。
私の名前は、さくら。
私にも、やっと名前がつけられた。