監禁恋情


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今日もまた、ひとりで食事をとっていた。

ひとりで食べる食事は、なんだか淋しいので、さくらは食事をとるときにだけテレビをつけていた。

ただなにも考えることなく画面を見つめて食事を口に運ぶ。

「こんな番組を見て楽しいのか?」

不意に、紀一がさくらの後ろに立っていた。

「起きたんですか?」

「…昨日は久しぶりにまともに眠った気がする。」

「って言っても3時間しか寝ていませんよ。」

さくらが笑うと、紀一はまたテレビを見つめた。

「自然に興味があるのか?」
画面には壮大な森。
そこに住む鳥や虫。
そこにナレーションが流れているような、淡々とした内容だった。

「だってこのテレビはこれしか映りませんよ?」

紀一はしばらく考えて、

「チャンネルの変えかたを知らないのか。」

少し驚いて言った。

「チャンネル?」

さくらが施設にいた頃、職員のみがテレビを触ることを許されていたために、さくらは電源の入れかたと切りかたしか知らなかった。
初日にコンセントをさすことが分からず、色々なところを歩きまわって約二時間かけてテレビをつけた。

紀一にそれを話すと、呆れてリモコンを持ってきて、さくらに説明する。

「すごーい!」

さくらの目が輝く。

「紀一さん物知りですね!」
笑顔で言われて、紀一はまたため息をついた。
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