監禁恋情
「君は本当に何も知らないんだな…。」

「知っていますよ〜。お料理とお掃除とその他の家事のことなら!」

笑顔で答えたさくらに、紀一はさらに問い掛ける。

「小学校には行ったかぃ?」

「…行ってないです…。」

さくらの顔から笑顔が消える。施設の中で、何度も自分と同じ年頃の子供たちがランドセルを背負っていくのを見て、羨ましいと思ったことは、確かにある。

実際自分は、簡単な読み書きと、足し算くらいしか勉強はできない。

「…そうか。」

「…きっ、嫌いですか!」

急に、声が大きくなる。

「頭が悪い子は嫌いですか?」

不安げに、泣きそうだけど泣かない顔で、紀一を見つめるさくらに、紀一は真剣に首を振った。

「君が何を学んでなかろうと、それは君が愚かだということにはならないさ。」

さくらがまた、今度は別の意味で泣きそうになる。

「だが、君が望むなら…。」

本当に、わからないくらいの照れている顔をして、

「俺が色々教えようか?」

さくらは、一瞬ぽかんとしたあとに、今度は本当に泣きべそをかいて、笑った。

「はい…!」

「じゃあ始めよう。


どうせ退屈な監禁生活だ。」
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