監禁恋情
「ねぇ、紀一さん。」

呼びかけられて、視線で応答すると、さくらはしっかりそれを察知して、言葉を続ける。

「『きいち』ってどう書くの?」

少女の質問に、思わず面喰らって逆に聞いた。

「そんなの知ってどうする?」

「いいじゃないですかぁ。教えてよぅ。」

少し拗ねた顔をする。
ここ数日一緒に過ごしてわかったことだが、さくらは感情豊かな少女だ。
最初に出会った時に受けた、人形のような印象とは掛け離れた無邪気さに、紀一は反応に困ることもしばしばあった。


「…紀一のきは…」

それでも、彼女が学びたいのなら教えてやろうと、さくらが持っているペンの上から、自分の手を重ねて、「紀」という字を丁寧に書いた。

「いちはさっき教えただろう?」
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