監禁恋情
さくらは、紀一の腕の中にいた。

さくらが言う大好きは、恋愛や、そのほかの名前ある感情からきたものではない、もっと根本的な、人間だけが持つ感性からきた言葉だと、紀一はわかっている。

しかしその言葉を聞いた紀一の中にも、そういうなんとも言い難い感情が溢れ、自然にさくらを抱きしめていた。

愛している。

そんなことじゃない。
そんな簡単ではない。


それは、紀一が持つ世界への感情に近かった。

ただそこにあるだけで美しく、ただそこにあるすべてが愛しい。


「さくら。」

名前を呼ぶと、

「はい。」

照れたように、返事が返ってくる。

彼女のすべてが愛しい。

そんな彼女にこそ、紀一は自分の人生を終わらせて欲しいと、心から世界に祈った。
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