監禁恋情
ガシャアアンッ

さくらの耳に、何かが割れる音が響いた。
驚いて、慌てて、紀一のいる部屋を覗く。
暴れているにしては、派手すぎる。

「紀一さん!?」

紀一は、割れたガラスの中に、
一人で立っていた。

風が部屋に入りこむ。

「……いや!!!」

叫んだ。
紀一が死んでしまう。
一瞬でそう思った。
紀一の目が、さくらを見ない。
さくらの言葉が届いていない。

慌てて駆け寄り、腕を掴んだ。

「…愛。今、行くから。」

「紀一さん!お願い!やめて下さい!」

「なぁ…待たせてごめん。」

「お願い聞いて!紀一さん!」

「愛してる…」

「紀一さん!!」

紀一がさくらのほうを向いて、さくらは、言葉をなくした。

紀一が、泣いていたから。

紀一の痩せた頬に、涙が伝う。

さくらの胸が、キリキリと痛んだ。
その顔があまりにも、寂しそうだったから。

自然にさくらの瞳からも、涙が溢れて、紀一の腕を濡らした。
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