監禁恋情
知らない誰かに買われるために自分を磨き、その誰かと会話をするために言葉を覚え、家事を覚えた。

それが幸せか不幸せかもわからない。

自分を買った人物に与えられなければ、名前すら持てない自分。

少女は白く細い足に何も履かず、素足のままベッドから降りて寝室のドアを開けた。

「…大変だ。」

思わず呟いた。

部屋は荒れ放題だった。
カーテンは破れ、テーブルはひっくり返り、壁には穴があいていた。

なんとか形を保っているソファーの上に、男を見つけた。

「寝てるの…?」

ゆっくりと、男に近づく。
細い体だ。肌も白い。
黒い髪には艶がなく、顔には不精髭が生えている。

…まともな生活してないんだろうなぁ。

男を見て、思った。
もう一歩、男に近付いた。
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