監禁恋情
「先生…」
ドアが開いて、厚子が入って来た。
そして紀一に、何かを手渡した。
「婦長…。」
「ここからは少し遠いですから。使って下さい。」
それは、車の鍵だった。
運転はしばらくしていないが、紀一が正常の時は当たり前にしていたので、恐らく問題はないだろう。
「ありがとうございます。」
深く頭を下げる。
「どうか、ちゃん帰って来てあげて下さい。きっとこの子には、あなたしかいないんですから。」
眠っているさくらを見て、厚子は目を細めた。
紀一もさくらを、思いつめたように見つめる。
「…さん…」