監禁恋情
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「逃げてばかりのお前が、俺に向かってくるとは珍しい。」


幹久はそう言って、紀一を見つめた。
感情を押し殺しても、伝わって来るほどの憎しみと、怒り、あるいは悲しみ。


「けじめをつけに来た。」


それを受けとめるように、紀一は幹久を見つめた。


「兄さん、どうすればあなたは俺を認めてくれる?」


「…認める…?」


「会社の権利も、財産も、俺は何も要らない。それでも兄さんは、俺を憎んでる。」

少しずつ、紀一は幹久に近付く。

「だから…さくらを殺そうとしたんだろ。」
「…あの小娘か…」

幹久の顔が歪んだ。
そして、意地悪い笑みを浮かべた。

「別に…ただ見てみたかった。
お前がもう一度大切な物を失い、完全に壊れる姿をな。」

紀一が、幹久の胸ぐらを掴んだ。
そして低く、低く呟いた。

「ああ…本当にさくらが死ぬようなことがあれば俺があんたを殺してる。」

幹久は、にやにやと笑いながら、続ける。

「ああ、それが俺の気持ちだ紀一。
お前は俺の大切な物を奪い、無意識の内にそれをくだらないと放棄した。大切な物が違うだけだ、わかるだろ?

俺もお前の事が殺してやりたいほど憎いよっ!」

幹久が、紀一の腕を掴み、体当たりで壁際まで吹っ飛ばした。
顔色はよくなったといっても、つい先日まで飲まず食わずの生活だった紀一は、あっさりと壁に飛ばされて倒れる。

「…っ…」
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