天神学園高等部の奇怪な面々ⅩⅢ

耳元で囁く宴の声。

まるで暗示にでもかかったように、アリスカの瞳が焦点を失っていく。

「『あのお方』なら…啓太みたいに優柔不断な態度でアンタを悩ませる事もない…素直じゃないアンタの気持ちも、口に出さずとも酌んでくれる…アンタの求めるものなら何でも与えてくれるよ？富も、名声も、快楽もね…」

既に啓太との関係に疲弊しきり、衰弱したアリスカが宴の妖しげな力に篭絡されるのは時間の問題だった。

人間にしては長く艶かしい宴の舌で首筋をレロォッ…と舐められ、アリスカの体が悪寒に震える。

「さぁ、頷いちまいな…我が主…河原院 融様の虜になるって…素直に認めて楽になっちまいな…？」

宴の口端が残忍に歪む。

「どうせ啓太とは、もう修復できやしないんだ」

「っっっっ…」

その言葉に、アリスカの頬を一筋の涙が伝う。

「そうだよね…そう…しようかな…」