spiral
第一章~one~
中3の夏。
ママがいなくなった。たった一枚のメモを残しただけで。
再婚したことと、毎月二十日にカードに入金するから、とにかく生きててって書いてあった。
生きててくれなきゃ、周りにアレコレ言われちゃうんだから!って命令付き
そんなこというくらいなら、再婚先に連れて行ってくれてもいいのになんて思った。
でも、不思議と涙はこぼれなかった。
だって、分かっていたから。
「ママにとって、あたしは不要だもん」
そういうこと。
パパと離婚したのが、去年。
一年にも満たないでの再婚。
ママが残したメモを丸めて、ごみ箱に捨てる。
二人で暮らしていた部屋に、今はあたしだけになった。
明日から夏休み。
大きくため息をつき、テレビもつけずに床に寝転がった。
「寂しいなんて感傷的なのは、もっと昔からあったから……慣れてるもん」
誰かが聞いてるわけじゃないのに、ポロポロこぼれてしまう呟き。
それでも、涙は溢れなかった。
きっとどこかで期待してるんだ、いつかは一緒に暮らせるんじゃないかって。
こんなことをされても、ママを嫌いになれないのがいい証拠。
「……ママ」
呼んでも、その人の声は聞こえてくるはずなかった。