spiral
急に寂しくなった。やっぱりあたしは独りになるしかないんだって思えて仕方がない。
被害妄想?それでもいい。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」
何度も呼ぶ。でも帰ってこない。明日にならなきゃ会えない。
誰もいない部屋は静かで、
「寒いよ、お兄ちゃん」
自分で自分を抱きしめて泣く。誰も抱きしめてくれない。頭を撫でてくれない。
ママやパパにしてもらえなかったことを、こんなに大きな体になった今、ものすごく欲してるみたい。
甘えたい。撫でてほしい。褒められたい。
いろんな欲求が自分の中でこだまする。
「おにぃ……ちゃあん」
呼吸がつらい。泣くと体がドンドン冷えていく。
涙を出すことで、体温まで無くしてしまうのだろうか。
「ひ……っ、う、っく。うあ……あっ」
声にならない。言葉にもならない。
「あ……ぅ、っく、うぁ……っ」
息苦しい、朦朧としてきた。このまま泣き続けて死ねばいい。
あたしなんか、死ねばいい。
ネガティブに溺れていく。ダメだって心の奥で誰かが叫ぶのに、もっと大きな声がそれをかき消す。
死ねばいい。独りになればいい。
そういうんだ。
「たっだいまーーー。……って、マナ?」
いつ床に倒れこんでたんだろう。
ふわりと体が宙に浮く感覚。それと、ゆっくりと温かくなってく感覚も。
「ナオト!心!……あいつ、何やってんだよ」
ドタバタと足音がする。それと声。
「おか……りな、さ」
どこにいるの?凌平さん。涙でみえないよ。
「おかえりなさいなんて、どうだっていい!」
あたしがかろうじて絞り出した言葉は、なんでか叱られたし。
そっか。そういうことも言っちゃダメなのか。あはは。
ポロポロと涙が溢れてく。寝かされたどこか。横向きになった顔に、鼻を伝って流れゆく生あたたかい雫。
「何があったのか聞きたくても、マナがこんなんだし。……チッ。携帯電源切ってんのかよ」
凌平さん、イラついてる?
あたしのせい?
「ごめ……」
なんとか謝って縋ろうとしてるのかな。
(かっこ悪いことしかできずに生きてて、意味あるの?)
言いかけた謝罪の言葉は、後が続かなかった。
ちぎられた心。寂しさはもう埋まらないのかな。