spiral

こんなに弱い心じゃ、お兄ちゃんの違和感をなんとかなんて出来っこない。

自分ですらどうにも出来てないのにね。

「寒い……よ」

心も体も冷えきっていた。どうしたらいいのかな。動けないや。

脱力して動けなくなったあたし。凌平さんが毛布を掛けてくれた。

「妹ほったらかしかよ」

また怒ってる。お兄ちゃんは悪くない。あたしがいいよって言ったんだって言いたいのに。

「りょ、へ……さ」

声が震えてる。

「ん?なに?まだ寒い?」

そうじゃないよ、違うんだ。

うまく思考がまとめられない。どうしたらいいの?

涙がまた溢れる。自分の無力さや、今の寂しさに潰されそうな心や。

いろんな思いがごちゃ混ぜになって、涙が止まらない。

カタカタ震えてる手を、大きな手が包み込む。

「マナは、どうして吐き出さないのかな?……バカだよ、ほんと」

また言われちゃった、バカって。

「あは、は」

泣きながら力なく笑う。

「……なにか欲しいものない?言ってみなよ」

手を包み込んでた温もりが、すこしだけなくなる。

それから頭と肩にかけて、温かいものが触れた。

あぁ、そっか。撫でてくれてるのかも。……うん。そうだ、いいこいいこだ。

思わず顔が緩む。嬉しい。これが欲しかったんだ。

「あ……とう」

感謝の気持ちも言葉にならずに、意識を手放す。

わずかな温もりだけで、こんなにも安堵するもんなんだね。

「……はぁ。なにをどうしたらこうなるんだよ」

眠ってしまったあたしをいつまでも撫でながら、凌平さんが愚痴ってたのを最後に聞いて、ストンと眠りに落ちた。

ゆっくりと頭を撫でる感触は、本当に心地いい。

言葉じゃなく、そのぬくもりで言われてる気になるの。

「大丈夫。安心して。守ってあげる。そばにいるよ」

そう言ってないんだってわかってても、そう変換したくなるほどのぬくもり。

あたしってつくづく一人で生きていけないんだって悲しくもなった。

(お兄ちゃんがくれるって思ってたのかも。そういうのを、ずっと……って)

寄りかかるばかりの生き方は、ほんのちょっとのほころびでこんなに呆気なく崩れてしまう。

脆い自分が一番悲しい。
< 115 / 221 >

この作品をシェア

pagetop