spiral
「相談してほしかったなぁ」
後頭部を掻き、まっすぐ一点だけをみて考え出した。
長い沈黙。そしてため息。凌平さんの動きを目で追う。
「うーん」
唸る。かなり困らせてるみたい。
「あの、いいです」
そんな凌平さんをみて言えたのは、それっぽっち。
「え?なんで。っていうか、何が?」
キョトンとしてる凌平さんに、「いいんです」と続けた。
「だって自分が考えなしに言っちゃったんだし。こういうのって自己責任ですよね。だからあたしに何かあっても」
そこまで一気に話すと、耳たぶを引っ張られた。
冷たい指先に「ひゃっ」と声を上げる。
「何かあっても?その続き、なんて言おうとしたの?」
怒ってる。ハッキリとわかる怒り。
「言いなよ。ね、なんて言おうとしたの?」
後半は一文字ずつ区切るように言われた。かなり怒らせたみたい。
「あの、だってあたし」
「俺が、なんでマナをあの場所から助けたって思ってんの?」
声は怒ってるのに、顔つきは静かなもので。それが逆に怖い。
「わかんない、です」
知ってる人だからかな?お兄ちゃんの妹だからとか何とか。
「わかんない?……あのさ、あの場所かなりヤバイ場所だったっていう意識、あるのないの?」
「あるかも」
「あるならなんでそんなこと簡単に言うかなぁ」
語尾が怒ってる!あのお店よりも今は凌平さんの方がヤバイと感じてたりする。
「だぁれが好き好んで、危険かもしれない場所に行こうと思う?自分のことならまだしも、血縁でもないのにさ」
「えと、その……行きたかった気分、とか。ほら、女の子と遊ぶお店だったし」
その場を和まそうとか一瞬思ったのが裏目。
「そんなとこ行くか!」
今まで優しい口調で、言葉を選んでくれてたようだったのに。急に怒鳴るんだもの。
「あ、ごめん」
「い、いえ。……すいません」
また何かやらかした。やっぱりママが言ってたように、あたしは人を不快にさせるのかもしれないね。