spiral
(よかった)
その部分にだけは安心できた。けど、それだけであたしにあんな態度をとる必要があったの?
「マナ?」
「あ、ううん。えと、ありがと。教えてくれて」
「ナオトが、時間がないから話しとけって言ってたから」
「あ、そう……なんだ」
なんだか変な気分。いろいろ引っかかる。あたしが気にしすぎ?
「とにかくお父さんとナオトが捜しに行くって。学校に行く時は、あたしとナオトとで送り迎えするから。お父さん、捜すのだけで手いっぱいだろうしって」
二人があたしのために動いてくれてるんだ。
「……」
いいのかなという迷い半分、嬉しさ半分。複雑な気持ちがトッピングされてしまうのが何ともいい難い。
「このまま二人で夕食食べてしまおうよ。一緒に作らない?」
心さんの申し出は、気分を換えるにはいいかも。あたしがここで何かを考えても、どうする事も出来ないから。
「ナオトが戻ってきた時に、温めて食べられるものにしようかな」
「うん」
買い出しに出ると危ないしと、冷蔵庫の整理ついでで具だくさんのスープとサンドウィッチを作ることになった。
温かいスープを食べながら、心さんが話をする。
「話を聞いてほしいことがあるって言ったの、憶えてる?」
「んと、確か言ってたなぁーって思うんだけど、何の話だったかなーって」
うっかり忘れてたかもと探るように返事をすると、あははと笑われた。
「話の中身、話してないわよ。まだ」って。
「そ?……そっか、そうか。まだだったんだ。はぁ……、忘れてるんじゃないかって焦っちゃった」
かなり忘れっぽいから、本気で焦っちゃったよ。
「多分ね、もしもあたしが話してたら……忘れられないと思うから。それは、ないよ……きっとね」
意味深な言葉。いつもと違う表情。どこか憂いを含んだような表情に、同性なのにドキドキする。
「忘れられないような話なの?」
スープの中のミートボールをスプーンで弄びながら聞いてみる。
「……そうね。かいつまんで言えば、あたしがずっと抱えてきた悩み。ナオトとあたしの家族だけが知っている、あたしの真実っていうことかな」
謎が深まる一方だ。