spiral
「……ふふっ。そんな顔しないでよ。眉間にしわが寄せると、そのまま残っちゃうわよ」
人差指であたしの眉間をつつく。
「だって、なぞなぞみたい」
昔から苦手なんだもん、謎解きって。
「そのことを作文で話そうと思ってるの。だから、マナにはちゃんと聞いて、受け止めてくれたらいいなって思って。だから、そういうことがあるわよって、先に言いたかったの」
「ふぅん」
心さんがどれほどの決心でこの話をしたのか気づけないまま、あたしは軽い相槌を打つ。
「マナは、あたしのことって好き?嫌い?」
難しいことは何も考えずに「好き」と返したあたし。
「あたしも好きよ」
心さんがスプーンを置き、あたしを横から抱きしめた。いつもと違う心さんに、あたしもつられるように抱きしめ返した。
「作文を読んでも、なにもかもが変わらないっていう補償があったらいいのにな」
その呟きの重さにも気づけずに「うん」と軽く返したあたし。
「さあ、早く食べて片付けちゃって、ベッドでまた話でもしよっか」
不思議な時間が流れた。時間というか、空気。
他愛ない話をし、ベッドで二人の時間を過ごした。
寝て起きても、その日のうちにお兄ちゃんは帰ってこなかった。
二人がママを捜してる間、凌平さんもが協力を惜しまなかった。
あたしは今、幸せの中にいるんだと思うと嬉しい半面、怖くもあった。
時々、フッとこの生活が一瞬で消えてなくなるんじゃないかとか思えてしまう。
そんな夜は、心さんや凌平さんがそばにいてくれた。
凌平さんは、来れない夜には必ず電話をくれた。それもが消えそうで怖かった。
ママを捜し始めて2週間ほどしたころ、あたしの初めてが始まろうとしてた。
高校の全日制と定時制の合同学園祭。
いろんな意味で緊張した日々を過ごし、その日がやってきた。
学園祭二日目。作文の発表会が、あと2時間で始まろうとしていた。