spiral
「母に、再婚相手に会うことを嫌がられ、とにかく私という人間が存在を許されていないのを何度も気づかされました。
人間は生まれる時が一人なら、死ぬ時も独りだと感じたのも中学生の時です」
そんなことを、たった14歳で気づかされたんだったっけな。
「そんなことを考えながらも、受験のことを考えて勉強をし暮らしていました。
ある日、新しい父と出会いました。優しく、何度も私が関わることを拒んでも心を開くまで待ってくれました。
誰かに思われることを知り始めたのは、この時が初めてです」
そう。何度も何度も待ち続けてくれた、お父さんは。
「そんな風に義理の父と関わることが増えたある日。母に殴られました。関わるなと。
母に言われたように拒んでも、ひたすら拒んでもそれでもその後も待ち続けてくれた義理の父。
けど私は、自ら死ぬことを選びました。母に、不要と言われたからです。
生まれてきてはいけなかったんだと気づき、母の望むものをあげようと死に場所を探しました」
息を飲む。あの光景がすぐに浮かんでくる。
「けど、死ねなかった。義理の父と兄に許してもらえなかった。
……生かされてしまったんです。二人の新しい家族に。母に内緒で生き続け、結果、また母を怒らせ、母に……」
ダメだ。あの時の感覚までが思い出せてしまう。
お腹にあの時と似た痛みが走る。錯覚だってわかってても、苦しくなる。
けど……ダメ。話さなきゃ。話すって決めたんだもの。
俯きかけた顔を上げる。腕がさっきよりも熱くなってきた。
「母に…………処女を奪われました。無機質な道具で私を貫き、母は笑っていました」
そういった瞬間、会場がザワついた。会場内で、隣同士で囁きあってる人がいるのまで見える。
なんでこういう時に限って、頭が冷静になってるのか不思議。
そんな光景をみても、あたしは言葉を続けた。
「そして、母の寂しい子ども時代の話を聞き、私を愛することは出来ないハッキリ告げられました。この先も愛せないとも言われました。私と妹を邪魔だったと言いました」
呼吸がしづらくなってきた。もう、薬が切れてきたんだろうか。痛さと熱さが体を支配しつつある。
「また、こんな言葉をくれたのも憶えています。愛情を受けずに生きてきた母。
同じように私と妹を愛せなかった母。だから、私も同じことを繰り返す……と。
その話の直後に、母の足が飛んできて蹴られたのも憶えています。死ぬかと思いました。
今度こそ死ぬんだ、と。自分で絶つ命より、誰かに嬲られるようにゆっくりと死が迫るのを感じながら死ぬのは、こんなにも怖いと感じさせられました。