spiral
最終章~endless~
お兄ちゃんとあたし。二人だけの生活がまた始まった。
しばらく入院し、退院してからまた学校に通う。あたしと心さんに向けられる視線。
さすがにあれからかなり経ってるのに、まだなの?というのが素直な感想。
「相変わらず、暇人ばっかね」
同情の目。奇異の目。あまりいい気分はしない。でも、それほどでもない。
「自分でまいた種だもん。いいよ、別に」
なんていうか、言ってしまったことでスッキリした方が強かったりした。
「お弁当美味しかった。今度教えてくれる?さっきの肉巻き」
「もちろん。料理しながらマナのお腹が鳴るのが、毎回楽しみで」
「あ!それは言わないでって言ってるのに」
心さんとあたしは、本当の友達になれた。あたしはそう思ってる。
過去も何もかも飛び越えちゃう友達。血なんてくそったれだもの。
「シンは、卒業したらどうするの?」
あれから変わったことは、呼び名。心の中では心さんと呼ぶことが多いけど、普段はシンと呼ぶようになった。
「ナオトとネットショップすることになってるの」
「え?そんなの初耳だよ」
ふふんと自慢げな顔つきを見せる。
「だってまだ準備段階だもの。話すわけがないでしょ」
お兄ちゃんとの内緒が嬉しいくせに、話したくて仕方がなかったんだね。
「そっか。ふーん」
「ね、悔しい?ナオトを取られたみたいで寂しいでしょ」
「そんなことないもん」
周りがどう見ていようが、気にならないな。うん。
「二人が楽しくしててくれるならいいよ」
寂しい気持ち半分、それとそれも本音。ママへの気持ちと同じで、楽しく過ごしてほしいだけ。
「バカね」
「うん。バカだもん」
お弁当箱を片付け、教室に戻っていく。特例を受け、あたしは全日制に通うことになった。
だからこうやって一緒の昼休みも過ごせる。
時々実家に帰って、お父さんを助けてるお兄ちゃんがいない時に、お互いに慰めあうように。
そうして時間は過ぎていく。優しい時間だけが積み重なっていく。
緩やかに、穏やかに。そして、その時間の中であたしはいつも笑っていた。
その楽しい時間はきっと永遠だと、信じて疑っていなかったのに。
運命は時に何度も人を試すんだね、お兄ちゃん。
あたしとお兄ちゃん。縁があって出会ったあたしたち兄妹。
お兄ちゃんは自分のことは何も言わずにきた。あたしのことばかり守ってくれてた。
今まで築き上げた絆。それを、試される出来事が起きた。