spiral
「……え?くれよ、って。あたし?」
面食らったのは仕方がないよね?思わずシンにくっついて、どうしたらいい?って顔になった。
「ムードもへったくれもない男ね」
「あのね、お言葉だけど、そういうのは二人きりの時に出すもんだろ。余計なのがいる時には出し惜しみするっての」
「ってーか、なんで俺に聞く」
お兄ちゃんも不機嫌そうにしつつも、そこは聞いてきた。あたしもなんで?って思った。
「だってよ、オヤジさんには会えない。実質上、オヤジさん代行はお前だろ」
「確かにそうだとしても、俺でいいのかよ」
お兄ちゃんがさらに食いつく。
「礼儀だろ、一応。お前がマナのこと、ずっと見守ってきたの知ってるし。惚れてたのも知ってた」
凌平さんがとても真面目な顔でそういい、お兄ちゃんにもう一度「ちょうだい」って言った。
「だからな、お菓子くれっていうのと同じ言い方はよせ」
「じゃあ、なんだったら許可くれる?」
拗ねた言い方になり、いつもの空気へと戻っていく。
「なんだったらっていったって、マナがいいなら俺は……別に」
お兄ちゃんの視線は自然とあたしの方に向き、「どうなんだよ」って目で言ってるみたい。
「二人って、付き合ってるの?」
「付き合って……る?どうなんだろう。わかんないけど」
とあたしがシンに返すと、「冗談だろ?」と凌平さんが大きな声を出した。
「冗談って、何がですか」
驚きながらも言い返した。それにまた過剰に反応する凌平さん。
「言ったよね、俺。マナのこと好きだって」
「あ、はい」
「それからだって、毎日メールと電話してるよね」
「そういうのはシンともしてるし。ね?」
「あー、うん。してるけど、この場でいうのはどうかな」
シンが気まずそうな顔になった。まずかった?今の。
「シンって結局のとこ、男だろ?男とメールって……。っていうか、いつの間に教えたの」
「へ?だ、だって、何かあった時に困るから」
あたしの周りがもうちょっと普通だったら、そういう心配もいらなかった。けど、そうもいかなかったし。
「わからないでもないけど。その携帯、俺のだよね」
「あー、はい。すっかり使い方覚えました」
あたしがニコニコしてそういった瞬間、部屋の空気が静かになった。というか、重くなった。
「……ケーキ、食べない?」
耐え切れずに、ケーキの箱を指してそういってみた。
自分の誕生日にそういうのがちょっと嫌だなと思ったせいで、あたしはさらに自爆したみたい。