spiral
「……ふふ」
熱でボーッとする頭。ベッドから腕をだらりと垂れ流すように寝ていた。
「雑炊出来たよ……っと」
そのあたしの腕を毛布の中におさめ、何をするでもなく握ってくれている。
夢うつつでも、感触だけで顔が緩む。
「ふふ」
目を瞑っているのに、凌平さんの表情がわかる。
「あとで一緒に食べようね」
優しい声。嬉しい。幸せ。負の感情じゃないものが中からあふれてきて、胸がいっぱいになる。
「……マナ?」
怖くないのにね。どうして涙が出ちゃうんだろう。いい夢を見れそうなのに、泣けちゃうのはどうして。
「大丈夫。これからは、俺が言ってあげる。マナが強がらなくていいように」
見透かす言葉。
もう、嫌になっちゃうな。寝てるだけなのに、どうしてあたしがわからないことがわかるの。
あたしに気づかせちゃうの?
涙を掬う指先。それだけでも安心できる。
「そばにいるから」
その言葉で浅い眠りは深くなった。それがまるで眠りの呪文のように。
かなり深く眠っていた気がする。夢も見なかった。体がベトベトして気持ち悪い。
「起きたわね」
「え。シン?」
シンが着替えを手にして、そこにいた。
「どうしてって顔してるわね。連絡もらったのよ、彼氏から」
『彼氏から』
改めてそう言われ、どこをみていいのか困る。
シンに付き合うことになったと言ってないのに、シンは何もかも知ってるような顔で。
「買い物行きたいからって、診ててほしいなんてさ。なんかすっかり甘くって嫌だわ」
こういう時ってどんな顔するのが正解?
「……なんて顔してんのよ」
不正解だったみたい。
「そんなに泣きそうな顔しないでよ。いじめてるみたいじゃない」
「そんなつもりは」
「ない?……というか、身に染みついちゃってるんだから、仕方がないわね」
シンが頬笑み、「許してあげる」と囁く。
「ほら、着替え。結構汗かいたみたいだから、ちゃんと着替えなきゃ」
「あ、うん」
着替えたいのに、よく寝てスッキリした割にまだダルくて。
「着替え、無理そう?」
「……はぁ」
大きく息を吐き、コクンと頷いた。
「マナが嫌じゃなきゃ、手伝うわよ」
迷ったのは一瞬。でも、シンはあたしの中では女の子で。
「お願い。助けてくれる?」
そういえば「しょうがないわね」とボタンを外しはじめた。
「風邪か、知恵熱か。何かしらね、急に熱なんて」
「わかんない、なんだろホント」
パジャマを脱がせてもらい、替えのパジャマを着る前に汗を拭く