spiral
肉親という、血がつながっている人に突き離され。
他人という、血のつながりのない人に手を差し出されている。
独りにならなくていいのなら、試す……?
「……」
小さなことだけど、勇気を出そう。
「んー?」
カートに先に戻ってたお兄ちゃんと伊東さん。
二人に向かって、両手を差し出す。
子供みたいな試し方。笑われてもいい。
「バカだな、案外」
そういいつつも、黙って伸ばされる手がある。
いい、もう。
今日、眠れたらいい。
繋いだ手の温度を、今は信じるしかない。
もしも裏切られたら、そこからまた考えればいい。
あの夏の日に、ママに置いて行かれた時のように……。
赤いチェックのベッドカバーに、ピンクのラグ。
いろんなものをどんどんカートに入れていく。
「必要最低限でいいです」
さすがに、金額が気になってきた。
「全部必要だよ」
そういった後、伊東さんはコソッと耳打ちをする。
「女の子しか使わないものあったら、入れていいよ」
そういった伊東さんは、少しだけ耳が赤い。
「あ」
一瞬でわかった。コクンと小さく頷き、近くの売り場に駆けていく。
「マナー?」
お兄ちゃんの声がするけど、一緒になんて買いに行けない。
アチコチみながら、腕に抱えて戻る。
「……ぷっ」
アチコチみたのに、やっぱり贅沢は出来ないと思う自分がいる。
そんなあたしを見て、なんでか噴き出すお兄ちゃん。
「それだけで足りるの?」
伊東さんも笑ってる。
「あ、はい」
そっとカートに入れると、
「後で足りないもの買うお小遣い渡さなきゃな」
って、伊東さんが頭を撫でてくれた。