spiral
 どれだけの時間が経ってたんだろう。

冷たくなったアキを抱き、放心してたあたし。

パパとママが二人揃って上機嫌で帰ってきた。そして、すぐに異変に気づいた。

「ちょっと!どういうことなの?」

アキを奪い、激しく揺する。

「アキ!起きなさいよ!ちょっと!」

パパはそんなママの姿をみて、大きく息を吐き、

「ゆっくり飲みに行くことすら出来ないってか?なんなんだよ」

あたしを睨みつけながら、そういった。

「ごめ、んな……さぃ」

はっきり言いたいのに、どんどん声が小さくなっていく。

喉の奥が、キュッと絞まってしまう。

「謝ってすむことじゃないでしょ」

片手にアキを抱き、反対の手であたしを平手打ちした。

乾いた音。それと頬と、背中に感じた痛み。

でも、痛さはあるのに、胸の方がもっと痛かった。

力なくママの腕の中にいるアキは、数日して小さな箱になった。

 それまでも冷たかったママは、よりいっそう冷たくなった。

パパとも口を利かなくなり、お店にいる時が楽しいのと電話で誰かに話してた。

ただ炊いてあるご飯を、適当に食べる。おかずなんかない。

パパは奥の部屋に行って、ゲームをしてる。

それか時々外出しては、お菓子をたくさん持って帰ってきた。

それを繰り返し、一周忌の日。パパは言った。

「あの時、お前まだ7歳だったもんな」

って。

あの夜のことを許されたのかと思った。じんわりと涙が溢れかけた。

でも、涙は流すことがなかった。

「子守り出来るって、簡単に受けなきゃよかったのよ。出来もしないくせに」

ママの冷たい一言で、涙は引っ込んでしまった。

もう、泣くことも許されなかった。

ママには許されていなかったんだって、痛いくらいに気づかされた。
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