spiral
第二章~pain~
あれから。
転校をし、数か月だけの新しい学校で受験勉強をした。
前の学校に伊東さんが話をして、ママが捜そうとしても言わないでもらう約束を取ったって言った。
「はぁ」
寒い。もう4月だってのにな。
「新しい制服で気分いいのに、こんなに寒いなんて」
「文句言うな」
お兄ちゃんもこっちの高校に入り、一足先に受験校に通ってた。
「オヤジから、入学式なんとか間に合わすってメールきてた」
「あ、うん」
伊東さんは変わらずママと暮らしてる。
それとお兄ちゃんがこっちに来てることは、ママは知らないらしい。
あたしが受験に合格したこともなにも教えていない。
「でも、定時制にこだわらなくってよかっただろ」
「ううん、いいんだ」
働きながら学校に通うことにした。
仕事も倉庫のピッキングの職を探せた。
本当についてた。
「早く自分の力でいろんなことが出来るようになりたいの」
伊東さんがどうしても制服だけは譲れないといい、学校からは服装は自由だということもあって許可が出た。
「オヤジ、制服になんの憧れがあるんだか。恥ずかしいっての」
「でも喜んでくれるならいいよ、それでも」
二人で他愛ない話をしながら、学校までの坂道を歩いていく。
そして、振り向くと、もう一人。
「二人して共通の話題で、盛り上がらないで」
心さんが、ふわふわの髪を揺らして笑ってた。
お兄ちゃんの彼女。元の学校にいた時、出会ったって聞いた。
「ナオトと一緒じゃなきゃ、つまんないんだもん」
あっけらかんとそういい、大きなバッグを手に家に来た。
「迷惑かけないから、一緒の学校に通わせて」
お兄ちゃんの転校先に、ちゃっかり自分の転校手続きもすませていた。
うちの近所に部屋を借り、よく一緒に食事を作ってくれる。
肌の手入れもなにも知らないあたしに、年頃の女の子の普通のことを教えてくれるんだ。