spiral

やがてパパと離れて、二人の生活が始まった。

でも相変わらずで、あたしのことを無視してるような生活。

ご飯だけは炊いてある。でも、おかずはこれといって用意されていなかった。

玉子でもと勝手に使うと、こっぴどく叱られた。

小さくなって生きてきた。

それでも生かされていることは嬉しかった。

希望も夢もない毎日だけど、嫌われていたってママのそばにいれるのは幸せだったんだ。

「ママとの生活も、おしまい……か」

切り離されてしまった。新しい生活に、あたしは要らないということ。

時間が経てば、頭の中が少しいろいろ考えられるようになる。

「あれ?今、お金っていくらあるの?」

生きててねって言ったけど、現時点での残金を知らない。

お小遣いだってまともにもらったことがなかった。

「さっきのカード!」

それをひったくるように手にして、近くのコンビニに急ぐ。

メモに小さく追記されてた暗証番号を押す。

「あ……」

残金、千円ちょっと。

唇をギュッと噛み、その千円を下ろす。それがなきゃ食べられない。

「千円で、次の振り込み予定までどうやって暮らせばいいの?」

帰り道は足が重たく感じられた。

お米も残りわずか。多少の料理は出来るけど、材料がない。

「化粧品とパンストばっかり入れてたもんね、ママ」

何か食品が入ってるといえば、卵か麦茶程度。

前途多難という言葉がよく似合う、一人暮らしが始まってしまった。

千円で食いつなぐのは、正直無理。

古本屋でフライパンで焼けるパンというのを、こっそり携帯で作り方を写し、材料を買って作った。

ぶかっこうなパンを、今日食べる分だけよけて、それ以外は冷凍しておく。

ジャムなんてものは高級品だ。

ただ、モソモソしたパンを食べる毎日だった。

飲み物は湯ざましだけ。

中学生の女の子とは思えない食生活。

「鶏肉でいいから食べたいなぁ」

そんな独り言が増えていた。

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