spiral
ブラひもを掴まれ、抵抗するとそのまま呆気なくブラが剥ぎ取られた。
抵抗した拍子に、転んでしまう。
「ほら、大人しくしてなさいよ」
そう言われたって、嫌なものは嫌だ。
「前はあんなに素直ないい子だったのにねぇ」
四つん這いになって逃げようとすると、その格好のまま器用に脱がされた。
「ママァッ!」
呼んでも鼻歌まじりに、最後の一枚に手をかけようとしていた。
「や、や……っ」
ショーツだけはと、手で引っ張る。
「は・な・し・な・さ・い・よ!」
頼りない薄い布を、グイグイ引っ張り合う。
なかなか決まらない結末に、ママの平手が頬を打った。
その瞬間、離れた手。その隙を逃すはずがない。
「あら、いろんなとこ大きくなったのね、ちょっと見ない間に」
ショーツも床に放って、見下ろすママの姿。
あの時みたいに、天井の明りを背にしているママ。
よみがえる記憶に、反射的に首に手をあてる。
「大丈夫よ、殺しはしないから。あたしはね」
そういい、ママは振り向いて男の人にバッグをちょうだいと言った。
バッグの中を楽しげに弄って、「あったあった」と長い箱を出す。
「あんたね」
そう切り出し、「大人になりたいって思ったことなかった?」と聞いてくる。
「え?なんで今、そんな」
「いいから答えなさいな。一人で暮らしてて、ママに置いていかれて」
思い出す、一人ぼっちの生活。
「お金を振り込んでもらえなきゃ生きていけない。苦しかったでしょ?生きるって」
ズリズリと裸のまま後ずさる。気づけば壁を背負ってた。
「大人になるとね、自分で働けるし、そのお金は好きに使えるし」
きれいに包装されたものを解きながら、ずっと楽しげに話すママ。
「今、あたし……働いてる、し」
そうポロッと洩らすと「知ってるわよ」と返ってきた。
「知って……る」
驚くと、箱の中から長い棒状のものを取りだしながら言った。
「じゃなきゃ、あの場所で待ってるはずないでしょ」
って。