spiral
ズルリと一気に引き抜く音がした瞬間、体が楽になった。
腰から下が、ずっと痺れている。
あたしのことを何度も嫌いといいながら、何度かママは棒状のものを挿し込んだ。
痛さと冷たさと悲しさが入り混じってた。
「けんちゃん、上手く撮れたの?」
ママが男の人にくっついて、カメラを見ながら二人でニヤニヤしてる。
「先に車に戻ってて」
ママがそういうと嬉しそうに頷き、男の人はいなくなる。
窓際でタバコに火をつけ、長く煙を吐き出すママ。
「おめでと、大人の仲間入り」
決しておめでたく聞こえない口調に、また涙をこぼす。
「あたし言ったわよね、不要だって」
メールの話。頷きはすれども、本当は認めたくなかった。
自分は要らない子だなんて。
冷たい床に、自分の涙が溜まってた。
「あんたの名前の由来、話したことないでしょ」
由来があることすら知らなかった。
アキの名前が秋生まれだからっていう理由でつけたのを、病室で聞いてしまったから興味が削がれたのかもしれない。
「マナは、愛と書いて、マナ」
煙を吐きながらそういうけれど、ちっとも愛情がこもっている気がしない。
愛情を感じたことがあったのか、この十五年間一度もあったのかわからない。
「ま、そんなこといっても、与えたつもりはないけど。愛なんてモノ」
そう思っていても、本人にそう認められると結構がっかりした。
「あんたのおばあちゃん、会ったことないわよね。どんな人だったかわかる?」
なんとか首を小さく左右に振る。
「おじいちゃんにも会ったことないものね。……会えるはずもないか」
そういい、自嘲的に笑ってから、しゃがんであたしの太ももにタバコが押しつけられた。
体が大きくビクンとなるものの、声を上げる気力もなくなっていた。
呼吸が乱れ、もう十分流しただろうと思ってた涙はまだ出てくる。
熱くて、痛くて、焼けた肉の匂いが自分からする恐怖感。
「そりゃそうよね。……小学二年の時にあんたのおじいちゃんは女を作っていなくなって。おかしくなったあの女が、一人で勝手に首つって死んじゃったんだもの。…………散々、人に当り散らしてから」
次のタバコに火を点けた時、体がビクンと反応する。
また押しつけられそうで、もうアチコチから汗がにじみ出てる感じだ。
気持ちの悪い汗が。