spiral
泣いて泣いて、ただ泣いて。
そんなあたしを、凌平さんが頭も体も全部包み込むように抱きしめた。
「生きてんだろ?今。マナは生きてんだよな?」
頷くことも出来ないでいると、
「だったら、ちゃんと生きてるってわからせてやれよ。生きてて死んでるような生き方すんなよ」
また怒られた。
なんで今日初めて会ったあたしに、こんなにも怒ってくれてるんだろう。
「これ以上、バカになんなよ」
その言葉に、疑問が浮かんだ瞬間、涙が止まった。
「……マナ?」
凌平さんの胸元のシャツをギュッと握って、俯いたまま聞く。
「あの」
「なんだよ、急に静かになって」
まだどこか怒ってる凌平さんに、ゆっくりと顔を上げ、見つめながら、
「頭悪いって意味じゃないバカってことですか?それ」
思ったままを口にした。
シンとした室内。
今まで冷静に聞けていなかっただけのような気がしたんだ。
今だって冷静じゃないのに、どうしてかな。急に頭に言葉がスンナリと入った。
「マナってやっぱ、バカでしょ」
あたしが聞いたことに対しての答えが、それ?
「や、やっぱりバカって頭悪い方だったんですか?」
また泣きだしそうになる。
「あー、もう、違うって。どう言えばいいんだよ」
抱きしめていた両手をバンザイして、お手上げって感じのジェスチャーをする。
「ちょっとでいいから、泣かないで黙って聞いててくれる?理解してほしいことあるから」
改めてって感じで切り出されたそれに、あたしは頷くしかなくて。
「まずひとつ、ナオトは味方。それと、俺も味方。まずはそれを理解して」
お兄ちゃんの名前が出た瞬間に、また涙がぶわっと出てしまい、
「ちょっと、約束破んなって」
困った顔の凌平さんがオロオロしてた。
「だ、だって、お兄ちゃんは……あたし」
止めなきゃと思うのに、そう思えば思うほど涙は溢れてしまう。
「味方。ホント、間違いないから。……な、ナオト」
こんな涙の止め方はない。
今、会いたくない人が奥の部屋から出てきちゃうなんて。止まるよ、確実に。
「マナ」
お兄ちゃんの顔を見たら、疑ってたとか会いたくなかったとか頭から一瞬で消えてて。
「おに……ちゃ」
お兄ちゃんに向かって、腕を伸ばしてた。