spiral
「また独りになって、どうにかなりたいわけ?マナの母親が望むように」
ビクンと肩先が震えた。
ゆっくりと顔を凌平さんに向ける。
「お前、なんてこと」
お兄ちゃんがそう言いかけたのに、かぶせるようにしてあたしは呟く。
「ママの望み……」
目を見張る。どこを見てるでもなく、今はこの場にいないママがいるみたいな気になる。
「ママの……」
「マナ?」
お兄ちゃんがあたしを呼び、肩をギュッとつかむ。
「不要、って。ママ」
携帯の画面。不要の文字。怖い顔のママ。ママの口からでた、要らないという言葉。
「あたしは、要らないって。ママは、ママの望みはっっ」
「なるの?そうなりたいの?だからナオトを突き放すの?」
なりたいはずがない。なりたくなんかないよ、アキの分も生きたい。
「独りでいるの、そんなに楽しかった?」
もう一度スイッチに触れたその言葉に、プツンとナニカが切れた音がした。
「……ふざ、けな……ぃで!」
肩に触れているお兄ちゃんの手を弾くように、凌平さんに詰め寄る。
怒りで体が震えるっていうことがあること、知らなかった。
「好んで死のうなんて思わない!独りが好きなんて、一言も言ってないもん!」
ドン!と凌平さんの胸に体当たりして。
「あたしのこと、知りもしないくせに」
拳を叩きつける。
「知ってもらおうとしないくせに」
あたしの拳をはねのける。
「知ったって何も出来ないよ!出来るはずないもん」
こんなにあたしが大声出せるなんて、自分が一番驚いてる。
「出来ないかどうか試してもいないくせに」
あたしの肩をトンと指先で払うように押した凌平さんに、あたしは初めてのことをする。
バシンと乾いた音が、部屋中に響いた。
「あたしを見てだなんて言えるわけないでしょ!」
それは、願い。
不器用すぎる言葉でしか言えない、幼いころからの願い。