spiral
なだらかになってしまった指輪を見て、眉間にシワを寄せる。
「なんかさ、こういうのって、性格出るよね」
凌平さんがあたしの手から指輪のなりかけを取って、掲げて呟く。
「そっか?」
お兄ちゃんが自分の作ってる指輪をしげしげと見る。
「うん。だってさ、ほら」
指先で指輪を指し、ふふっと笑ってからこういった。
「最初から高望みするあたり、本当はいろんな欲が詰まってる気がする」
「高望み?あたし?」
いい意味で取れないその言葉に、口を尖らせる。
「だって、初めて作るのに、いきなり螺旋状のを作ろうとするあたりがね。なんていうか、チャレンジャーともいうけど」
クックックと笑い、「だからなんじゃない?」と続ける。
「だから、って?」
聞き返すと、ニッコリ笑ったまま、
「ああしたい、こうしてほしい。そういうのがパンパンに詰まりすぎるから、辛くなるんじゃないの?マナって」
まだ残ってた螺旋の跡。それを手早く直してしまった。
「ま、そういうの出せる環境下じゃなかったから、しゃあないか」
ゆっくりと立ち上がり、奥の部屋から小さな箱を持って戻ってきた。
「この中で気になるのある?」
ふたを開けると、中にはたくさんの石。色とりどりの石。
「わあっ」
キラキラしてる。きれい。
「気になるのあったら、言ってね」
気になるのも何も、見てるだけで楽しくなった。
「そういうとこ、やっぱり女の子だよねー」
紅茶を淹れかえてくるといい、また席をはずす。
「俺なんかは、このあたりかな」
真っ黒い石を指先でつまみ、お兄ちゃんもどこか楽しげだ。
キラキラしたものって、人の心をくすぐるのかな。
あの、死のうとした夜。あの場所でみた夜景のなりかけ。
点在してく光が、ゆっくりと増えていった。あの光の数々もきれいだった。
死のうと思ってた心が一瞬グラつきかけたほど。
「それかー?っていうかオニキス選んだのか、ナオト」
「……なんだよ、ダメかよ」
怪訝な顔のお兄ちゃんに、「ふぅん」と言いながら凌平さんは頭を撫でた。
「なんだよ。ガキ扱いすんな」
真っ赤になったお兄ちゃんに、どこかバカにしたようにこういった。
「お前さ、不安定なのか。今」
固まったお兄ちゃんに、「呼ばれるっていうしな」といい、オニキスを手にして眺めてた。