spiral
「呼ばれる?」
疑問に感じて聞くと、「マナはどれ選んだの?」と聞く。
なんとなく気になったのは一つあることはあるけど、何か言われちゃわないかな。
「いいから教えてよ」
肘をつき、両手のひらの上にアゴを乗せ、楽しげに微笑む。
「あの、これ」
指したのは、薄紫の石。
「……へぇ」
そういったまま、黙ってしまった。
お兄ちゃんの時みたいに茶化したりしないのかな。
「マナの石ってなんなんだよ」
痺れを切らしたのか、お兄ちゃんの方が先に聞いた。
「これ?……うん、やっぱり石って不思議なんだな。……マナはちゃんと自分がどう進みたいか。心の奥にあるんだよ、きっと」
そういって、なかなか石の説明をしてくれない。
「何月生まれ?」
「え、じゅ、十二月」
「何日?」
「へ、あ、二十四日」
「ふぅん」
「なんだよ、誕生日も関係あるのかよ」
「いや?誕生日は聞きたかっただけ。その誕生日の石じゃないよ、これは」
「あぁ?」
なんだかおかしな空気になってきた?もしかして。
「えっと、それで?なんて名前の石なんだろうって……えーっと」
二人の間に入って聞いてみる。
「タンザナイト」
聞いたことないや。
「ネガティブなエネルギーをね、ポジティブに変える石と言われてるよ」
「ポジティブ。……ふぅん、この石が?」
「十二月の誕生石なのは合ってたけどね」
指先でつまんで、食い入るように見る。
薄紫の小さな小さな石。それがあたしをいい方向に変えてくれるといいな。
ささやかな願いくらいは許されてほしい。そう願いながら、頬を緩めた。
「つけてあげる、これが出来上がったら」
「ホント?」
子供のようにはしゃいでしまい、すぐそれに気づく。
「あ、ごめんなさい」
そう謝ると「いいんだよ」って頭を撫でる凌平さん。
「喜怒哀楽を素直に出す方が、女の子は可愛いと思うよ。俺は」
面と向かってそんなこと言われると、免疫ないだけに照れる。
女の子対象に言われたことなのに、自分が可愛いって言われた気になった。
ちょっと調子に乗ってないかな?大丈夫かなって心配になる。
けど凌平さんがあまりにも表情を変えないから、大丈夫なんだって安心する。
不思議な人。凌平さん……って。