光の射す方へ
兄を待つ喫茶店で女は言った。

『シュウ(兄)が頼るとしたらあなたしかいないわ。』

私は何故だか全くわからなかった。兄は人付き合いもよく友人も多かった。私の所に来たのは、たまたまなんだとしか思えなかった。

女は続けた。

『シュウはいつもあなたの事を話していたわ。自慢の妹だって。幼少時に随分と寂しい思いをさせてしまったって…酔うといつもこの話。でも今は立派に都会で生活して、手に職を持って、色々な思いをさせてアヤも辛い思いをしたと思う。でもアヤはこの辛さをステップにし、明るく、優しく、たくましく、あいつがこの世で一番立派なんじゃないかな。ハハハ。ってずっとずっと同じ事を何度言うのよ。私もあなたを見た時、とても初対面だと思えなかったわ。』


嬉しかった。ただ嬉しくて、言葉も出ない、涙も出なかった。


兄が来たので私は席を後にした。
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