俺はその時、どう行動するか。
俺の言葉に麻生さんは首をかしげる。



「相良様、一生に一度の独身最後の夜ですよ。楽しまれないと」


「…………」


「思い出にして下さい。ホテル白熊に泊まって良かったと…もちろんバレなければですが」




麻生さんは小さな声でそう言うとウィンクまでした。



このじいさんには、何を言っても無駄かもしれない。


俺は軽い目眩を感じつつも麻生さんに念を押す。



「とにかく…、同じロッジで泊まっていることと温泉のこと、絶対内密でお願いしますよ」




秘密がまた増えてしまった…。


最初は澪に正直に全て話して許してもらおうなんて考えていたが…


もう絶対にバレないようにしなければならない。



「もちろんでございます。この麻生を信じてくださいませ」


「…………」




信じられないだろ、どう見ても。


とはいえ、俺にはもうこの麻生さんを信じるしか道もない。




「………じゃあ、そういうことで」



マジで頼みますよ…。


俺は祈るような気持ちで麻生さんを見つめてから、その場を去ろうとした。



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