俺はその時、どう行動するか。
冗談のつもりで出した右手だったのに…


想定外の綾音の反応に、俺の脳内の赤い警報ランプが鳴り響き、体中からは汗が噴き出してきた。



まさか本気で手を握られるとは…。


自分で言ってしまった手前、嘘ですなんて今さら言いづらくなってしまった…。


澪以外の女性に手を握られたのなんて、小さい頃を除けば初めてだった。


俺は自分の手を握る綾音の手を見る。



澪の手はハンドモデルのように美しく、爪もいつも綺麗に伸ばされ

マニキュアに光る石やラメ、時には何故かリボンまでついていたりする。


それに比べ綾音の手は、全体的に小さくて、爪はほんのり薄いピンク色に塗られただけだった。


爪先も子どものように丸くカットされ、愛らしい手をしている。



その小さな白い手で、俺の手をギュッと握る綾音。







澪以外の女性と手を握るなんてまずいだろ…と思っていたのに…。




瞳をギュッと閉じ恐怖と戦っている姿を見て、


気付けば俺はその手をそっと握り返してあげていた。




何故か胸の奥がきゅんとしてくる。


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