俺はその時、どう行動するか。
しかしその時…







「…もう、帰って来ないと思いました」






俺の背中に、冷たい綾音の体が重なった。






「さっき起きたら…悠人さんが居なくて…」




綾音の絞り出すような声に、俺の心臓がドクドクと音を立てる。





「やっぱり私のことは置いて、澪さんの所に行っちゃったんだって…」


「…………」






冷えきった綾音の体は小刻みに震えていた。






「悠人さん…私…」



綾音はさらに俺の背中に強く抱きつく。



「私…ちゃんとわかってますよ。悠人さんはきっと最後には澪さんを選ぶって…」


「……え?」


「いいんです。それが当たり前なんです…偶然出会っただけの私が、ずっと一緒に過ごしてきた澪さんに勝てるはずありませんから…」






予想外の言葉に俺が立ち上がり綾音の方を向くと

綾音の瞳からはたくさんの大粒の涙が溢れていた。





「でも…でも…今夜だけは…
側に居てください…」


「…あ…やね…」


「ど…どこにも…行かないで…」




綾音は肩を震わせ嗚咽を漏らしながら必死に訴える。






「…好きになって…ごめん…なさい…」









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