俺はその時、どう行動するか。
「ほら、早く。あまり時間がありませんわ」




何も知らない澪は俺の腕に抱きつくように体を絡ませる。




「ちょっ…離れろよ」


「あら、照れてますの?珍しいですわね」


「ちがうって…会計が出来ないだろ」




俺は澪に腕を離させると素早く会計を済ませる。



「悠人さん…もしかしてまだ昨日の事怒ってますの…?」



その間も澪は俺にぴったりとくっついて離れない。



「…いや、そんなことないよ」


「本当かしら?じゃあなぜワタクシを見てくださらないの?」


「…………」


「ワタクシ、今日は悠人さんの為に新しいワンピースを着てきたんですのよ」




口では強気なことを言っていても澪なりに寂しかったんだろうな、と思った。




「ごめん…」



だけど今の俺の神経は、それよりも綾音に向いていた。


後ろで他人のふりをしながら俺たちを見ている綾音は、今どんな顔をしている?


綾音は今、どれくらい傷付いているだろう。




ごめん…綾音……


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