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柏原が屋敷にやってきたのは、おばあ様が入院してからすぐのことだった。


おばあ様が眠るように息を引き取ってから葬儀をして埋葬するまで、ずっと雨が降っていた。 強い人だったから、私達の涙を見たくなかったのよねって私が言うと喪服姿の柏原は無言で頷いたっけ。




――――暖房のきいた教室に入ると自分の席につく。

窓際の一番後ろの席が私の特等席。



「ごきげんよう、茉莉果さん」

「ごきげんよう」



目の前に座るクラスメイトといつもの挨拶。
彼女の父親は財務大臣で、母親は元ニュースキャスター。



「茉莉果さんの執事様。今日も素敵でしたわね」


「そうかしら、雨なのにあんな真っ黒い燕尾服着てるからこっちまで暗い気分になるわ」


「でも、そこがまた素敵ですわ。雨も滴る良い男ですわ! あの艶やかな黒髪が品があって優美で……」


彼女は「はあ」とため息をつく。









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