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お嬢様のご両親
「────ねぇ柏原、マッコウ鯨一匹を鯨ベーコンにしたら何人分のベーコンが出来るかしら?」
「お嬢様、鯨は国際捕鯨取締り条約の定めるところ……」
「わかったわ、鯨はいいわ。松阪牛一頭から何人分の特上カルビがとれるのかしら?」
「お嬢様、何か動物を殺害したい気分でしたら至急主治医に相談いたします」
柏原は手作りのレアチーズケーキを綺麗に八等分に切り分けると、ナイフを白い布に綺麗に包む。
プディングがいいと言ったはずなのに、急にレアチーズが食べたくなっちゃたのよ。でも、柏原は用意してくれた。
「ティータイムの前にナイフを片付けてきてもよろしいでしょうか? キッチンで鍵付き保管庫に納めて参ります。私はベーコンにもカルビにもなりたくはございませんから」
「柏原! 私は何か質問したい気分なの! ナイフなんて、後で片付けなさい」
「念のため……」と小さく呟きナイフを白い布でぐるぐると巻き付ける柏原。
私に背中を見せない所が彼の執念深い一面だ。
今日は、委員会があったのだけど「代表は今日一日たまに顔が真っ赤になる。きっと体調不良だわ」という噂が学園中に広まり。堂々とサボれた。
どうせ私がいても、笑顔で高い席に座り小さく頷くだけの役目だ。