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「はぁ、お腹いっぱい」

 セルマン先生のおかげで、柏原の作る夕食が豪華だった。

 ヴァイオリンのレッスンよりも、あの先生の存在価値が上がる瞬間よね。



「お嬢様食べてすぐに横になりますと、……いえ、なんでもございません」


「ちょっと! どうせ太るとか言いたいんでしょ? 途中で言うの止めないでくれる?」



「お嬢様はもう少し太られても構わないのですが、品がないのでなさらない方が……いえ、なんでもございません」


『なんでもございません』って涼しい顔して、最後まで言ってるわよ柏原。




 私はフカフカのカッシーナのソファーから嫌々だけど身を起こした。『品がない』と言われるのは不本意だ。



 私は、紫音茉莉果よ。誰もが羨む知性と品性が売りなのよ。



 本気で売ってるわけじゃないわよ? 私になんて値段つけられないじゃない? モノの例えよ。



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