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────久々に、真面目にヴァイオリン練習した。
お父様が目をキラキラさせて「曲ができた!」っていうから、泣く泣く頑張ったわよ。
ドイツからセルマン先生もやってきて、泊りこみレッスンまでやったわよ。
柏原が休暇明けにびっくりしてたっけ。
たかが音楽祭なのに!
おかげで生中継で全世界に放映されることまで決まっちゃって!
『紫音家、親子初の共演!』って特番までやるのよ!
信じられない!
フラフラする足取りで歩く、音楽祭当日。
私は柏原と控え室を出て音楽祭会場へと向かっていた。
「お嬢様、本日のドレスもとても良くお似合いでございますね。テレビ映りも貴女なら完璧でございましょう。ご両親もさぞお喜びになられます」
「そそそそそ……そうかしら?」
「茉莉果様、大丈夫でございますか?」
「だっだだだだ大丈夫に……きっききききき決まってるじゃない? かかか柏原」
柏原がケースからヴァイオリンをとりだした。震える手で受け取る。
危うく落しそうになって柏原がキャッチした。
「お嬢様……」
ステージの袖から会場を覗くと、たくさんのテレビカメラと生徒に父兄に観客。
最前列にはセルマン先生とお父様が期待した眼差しで、こちらを見ていた。
「作曲家ってお気楽な商売ね……私も作曲者になろうかしら?」
「お嬢様、その作曲をする事が非常に難しいとご存知でしょうか?」
お母様は既にスタンバイを済ませていて、幕が開けば……私が代表を勤めるこの学園で初の親子共演。
上手にできたら、私も演奏旅行に連れて行ってくれるのかしら?
「柏原……臨時ボーナス出すから、お父様とセルマン先生だけでも眠らせてきて。ついでに生放送の音をどっかのプロの演奏にふき替えてちょうだい」