SWeeT†YeN
「そういえば、イケメンは? 柏原」
ソファーに優雅に座りなおして、知的な会話を始めようかしら。
気分は探偵事務所の女社長よ。
柏原はA4サイズの茶封筒を私に手渡す。
「彼は、バスケットのボールを持っていましたので、学校へ『プロのバスケチームへの勧誘だ』と伝えたところ、簡単に個人情報を教えてくださいました」
「うわっ! 柏原、そういうの詐欺って言うのよ?」
柏原はバッと私の手から茶封筒を取り上げる。
「申し訳ございません。ご迷惑でしたら、この書類は責任もって廃棄させていただきます」
柏原は書類を高く上げて心底申し訳なさそうな表情を作り出す。
私はそれを奪おうとソファーから立ち上がり書類めがけてジャンプしてみた。
柏原は生意気にも、私より二十センチ以上も高い。
ピョコピョコと飛ぶついでに、足を踏みつけてみたけど……ピカピカに研き上げられた黒い革靴には、なんのダメージもないようだった。