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お父様が用意してくれた譜面と、ヴァイオリンと弓を持つ。
淡いピンクのドレスは、柏原が選んでくれたドレスだ。
「か…かかかか柏原! だだだだだ抱き締めて!」
「だっ抱き締める……のですか?」
「だって! 緊張するんだもん柏原が抱き締めてくれるのが一番落ち着く気がする」
「かしこまりました」
すると柏原は曖昧な笑みを浮かべて、遠慮がちに私を優しく包み込む。
私は腕をまわして執事の胸に顔をうずめた。
この前は心臓がドキドキして鳴りやまなかった。
でも、今はドキドキした心臓が落ち着いていく。
本当に柏原って、不思議な執事だ。
背中を二回トントンと叩かれ……短い抱擁が終わるとステージへと背中を押された。
「続きは……また今度」
耳元で囁かれ、息を飲み頷くと覚悟が決まった気がした。
「よし大丈夫! 私が間違えても、お母様はプロのピアニストなのよ。
何もわからないくらいに上手くカバーしてくれるわ」
「お嬢様……他力本願はよくありません。会場で見守っています」