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「お迎えにあがりました、お嬢様」
綺麗なお辞儀と、忠誠の限りを尽した態度はやっぱり心地いい。
あんな事、言わないで欲しかった……
いつもと変わらない執事の微笑は、私だけのものだと思っていたのに。
「柏原、車は?」
「本日は歩いてお迎えに上がりました」
なんと、私の執事は車を忘れてきてしまったらしい。
「えっ? じゃあどうやって帰るのよ」
「歩いて帰りましょう」
ふーん
歩いて?
足で?
歩いて?
……柏原は、紙袋を持っていて、その中からキャメルの真新しいマフラーを取り出した。
それを私の首にフワリと巻き付けると満足したように、満面の笑みを作り同色の真新しい皮の手袋を私に差し出す。
「さぁ、参りましょう。夕暮れには自宅まで戻らないと冷え込みが厳しくなります」
マフラーも手袋も上質感ある素材で、軽くて暖かくて優れものだけど……
「ちょっと! 私の許可なく勝手に決めないで」