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「お嬢様の教育を一からこの私にやり直しをさせていただきたいと申しましたところ、旦那様は……」
「ねぇ柏原、それより疲れたぁー」
柏原がまた刺すような鋭い視線で私を睨みつける。私は慌てて「つ・か・れ・た。柏原ぁ」甘い声で助けを求めた。
お父様と何を取り決めたかなんて、この際いいから、とりあえず歩くのは嫌なのよ!
だけど執事は、「一人で取り残されたくなければ歩いてください」と圧力をかけてきただけだ。
そればかりか、無駄に長い足でさっさと歩く。
「柏原ぁ……抱っこして」
柏原は無視だ。
もう泣きたいわ。
酷すぎる。この男、極道よ。
「近道をいたしましょう。ここを通過いたします」
「こちらへ」と小さく囁き進む柏原。
もう何を言っても無駄らしく、樹々が繁り綺麗な歩道へと入っていく。
公園ね。
いつもこの公園の前を、車で通過しているわ。
だけど、ここへ足を踏み入れるのは初めてね。歩いてじゃないと入れないんだわ。
「もう少しゆっくり歩きましょうか?」
やっと執事らしく主人への気づかいをみせた柏原。
その提案に何度も頷く。
「本当に、貧弱なお嬢様だ」柏原にクスクス笑われて悔しいけど、反論ができないのは、もっと悔しい。
学校から十分以上は歩いたかしら?
私の息は完全に上がり、柏原がまいてくれたマフラーが激しく上下している。