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執事様家出中につき
『茉莉果様へ
ルネサンスとは、十四から十六世紀にかけて起こった歴史的文化革命を意味します。
茉莉果様が妄想された、リオのカーニバルは、サンバというダンスのコンテストでございます。
しばらく暇をいただきます。身勝手な真似をお許し下さい。柏原』
「はあぁぁぁぁ……!?」
次の日の朝、誰にも起こされずにたっぷりと睡眠をとった私を待っていたのは流れるような楷書体で書かれた手紙だった。
信じられないわっ!
柏原が家出したの……?
確かに昨日はルネサンスで口論になって言い合った。夕食は口もきかずに食べた。
でも、それくらいで家出?
静まる家の中。
これじゃ本当の本当に、私はひとりぼっちじゃない!
「柏原! 隠れてないで出てきなさい!」
大声で叫んでみても……
物音一つしない広い屋敷
嫌よ……
なんでなの?
こんなことなら、柏原の言うルネサンスを信じてあげればよかったわ……
携帯電話から柏原を呼び出してみる。
鼻をつまんだ女が「この電話は電波が届かないところにあるか、電源が入っていないため~」と暢気な案内を繰り返している。