ＳＷｅｅＴ†ＹｅＮ

柏原。

ひょっとして、ブラジルにサッカー観戦に行ったの？



許せないわ！
私を置き去りにするなんて！



「ちょっと！　陽子さん！　柏原に連絡できないの？」



「できませんよ、お譲様。休暇は旦那様も認めています。本当に世話が焼けるベアトリーチェですこと……｣



キッチンから笑い声が聞こえてきた。


あなたに、笑われる筋合いはないのよ！

使用人の分際で……


正直、陽子さんが帰ってくるなら両親のどちらかが帰ってきてくれた方が良かった。


私は怒り任せに、弓と弦を握りしめた。


カルメンだわ……
情熱のカルメンよ！


八つ当たりのような演奏を繰り返すと、陽子さんはそれ以上何も言わなかった。