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息の詰まりそうな堅苦しい校則、規律と、輝かしい伝統あるこの学園。さくら女学園。
「おはようございます。紫音代表」
柏原の運転する車で学園の入り口に到着すると、待ってました! と目を輝かせた生徒Aが挨拶をしてきた。
「おはよ」
『代表』とは私に附属する呼び名だ。代表はこの学園で一人だけが手にする称号で、教師達からの推薦や、生徒からの人気投票みたいのをして一人が必ず選出される。
代表はその名の通り対外的な行事への出席、学園内の委員会への出席など様々な役割があり、めんどくっ……いえ、名誉あることだ。
私の美貌と知的な行いからすれば、しょうがない役割なのだけど……めんどくっ……いえ、大変な役割だ。
正直、知らない生徒からの挨拶にまで笑顔で応えなきゃならないのは辛いのよ。有名人ってほんと大変。
「本日は何時頃お迎えにあがればよろしいでしょうか? 茉莉果お嬢様」
柏原は、私にカシミヤのコートを着せ通学用のエルメスの牛皮カバンを差し出した。
「委員会があるから四時頃お願い」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ」
美しいお辞儀コンテストがあるなら、間違いなく優勝できてしまいそうな程、美しいお辞儀を見せてくれる私の執事。
さらりとした黒髪が、ピクリとも動かずに完璧な姿勢が保たれている。
ギャラリーからは、きゃあ柏原様、と声があがるが、それは私の執事だから歓声があがっているだけの話。