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 そしてこの学園は、男子禁制。執事も特別な行事以外は中に入る事はできない。

 だから、大きな赤い煉瓦の校門前でのお見送りは毎朝の恒例行事。エルメスのカバンを掴む。



「紫音代表の執事様、素敵」
「格好いいわね。私も執事が欲しい」


 黄色い悲鳴が絶好調ね。何度もいうけど私の執事だからきゃーきゃー言われちゃうのよ? 柏原。

 まあ……柏原は外見だけはパーフェクトだから、どんどん騒ぎたてなさい。

 私も鼻が高いわ。


 屈折した性悪の性格は、喋らなければ隠し通せるもの。

 性格の悪い執事を持つ主人も色々と気苦労が絶えないのだ。

 柏原に、この気持ちが理解できるかしら。できないわよね。お気楽な執事が羨ましい。



 柏原は私の姿が校門に消えていくまで絶対に背筋を伸ばしたまま、腰から斜め四十五度に保つ姿勢をくずなさい。


 校門のど真ん中でずっと頭を下げている柏原を眺めみようと足を止めた。


 私が行ったと勘違いして顔あげた柏原と目が合うかもしれない。


 腕組みしながら不敵な笑みで柏原が顔を上げるのを待っていた。


 性格の悪い執事への仕返しよ。



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