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柏原は、ソファーで寛ぐ私の前で膝をつく。

頭を低くして優しい眼差しで私を見上げる。


「ダンテは生涯をかけて書き綴った自身の作品に、彼女を登場させ神のように崇めた」

神か……
ベアトリーチェ中々奥深い話だったわ。


要するに、死んじゃったわけね?
死んじゃったら終わりよー。


「そういう意味なのね」


それが私とどんな関係があるのかしら?

話が抽象的すぎて意味が分からない。私は結婚もしてなければ子供もいない。

だいたい若くして死んでしまった人に、例えないでいただきたいものだ。



「ダンテの想いは、永久にベアトリーチェには届かない……永遠の片想いという意味です」



永遠の片想い。





「そんなの自業自得じゃない。想いを然るべき時に伝えないからダメになっちゃったんでしょ? 押してみて、ダメなら引いてみたらいーのよ」


我ながら凄い名言を放ってしまった。


さぁ……崇めなさい柏原
貴方のお嬢様は中々賢いでしょう。


それなのに、
柏原は短いため息をついた

失礼ね!?



「お嬢様、押す事も引く事も禁じてしまう想いもあるのです」


「そんなの……偽物よ」


本気なんて、そんな簡単に割り切れるものじゃないでしょ?

私なら断然我慢なんてできないわ。



「狂おしいほどに、愛していても。貴女は偽物だとおっしゃるのですか?」



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